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高次脳機能障害⑧

高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、交通事故により頭部に強い衝撃をうけて、脳の一部が損傷し、機能が低下した場合に発生する後遺障害をいいます。

頭部外傷により、意識障害が発生した被害者のかたが、意識の回復後、認知障害や人格変化などが発生し、社会復帰が困難となることがあります。

高次脳機能障害は、身体的な機能については特段に支障はなく、身体的な介護をする必要はないものの、高次脳機能障害により人格変化が生じているため、日常生活の上でも見守り、声掛けをする必要があるとして、将来の付添看護費が認められることが多いです。

今回は交通事故により高次脳機能障害の後遺障害が発生した事案について、近時の裁判例(東京地裁平成29年4月13日判決)をご紹介します。

この裁判例は、38歳男子会社員が自動二輪車を運転し青信号交差点を直進中、対向右折乗用車に衝突された事案(脳挫傷、左急性硬膜外血腫、高次脳機能障害、自賠責2級1号)です。

この事案では、事故後、被害者に、認知障害、行動障害、人格変化が顕著に見られるようになり、神経心理学的検査の結果の推移からは、リハビリテーションを通じて認知障害の症状に一定の改善が得られたことがうかがわれるものの、受傷前には見られなかった自発性低下、気力の低下、衝動性、易怒性、自己中心性等の症状は引き続き顕著に認められる状態であって、診察してきた医師らは、日常生活の全ての場面で、家人の介助を必要とする状態であると診断していることが認められました。

そしてこのような被害者の症状は、脳外傷後の高次脳機能障害の症状として典型的なものであり、本件事故により重篤な脳外傷を負い、事故後には重篤な意識障害があったこととも整合的である一方、本件事故でに脳外傷のほかに、被害者に高次脳機能障害の症状を発生させ又は増悪させるような因子が損害していた事実は証拠上認められないことからすると、これらの症状は本件事故による脳外傷に起因して生じた後遺障害であるとし、被害者の脳外傷に起因する後遺障害の程度は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」として別表第一第2級1号に該当したとして、自賠責と同様2級1号の高次脳機能障害を認定しました。

将来介護費については、暴言、暴力、興奮状態、診察拒否等の傾向が強く、自発性低下、注意力低下が顕著で、食事、入浴、更衣等の身の回りの動作のほとんどにつき、母らによる声掛けや身守りを要する状態であり、右上肢及び体幹の運動機能は正常であることを考慮しても、生涯を通じて声掛けや見守りを主な内容とする介護が必要であると認められ、これに要する費用は日額5000円とし、症状固定時の年齢である41歳男性の平成23年簡易生命表による平均余命は39年であるとして、日額5000円で余命分を認定しました。

なお、後遺障害逸失利益については、別表第一第2級1号の後遺障害が残存しており、労働能力喪失率は100%とするのが相当であること、基礎収入を345万4283円、労働能力喪失期間を26年として、実収入を基礎収入にして26年間100%の労働能力喪失で認定されました。

本件は症状固定時において運動機能は正常であったとしても、認知障害、行動障害、人格変化が原因で身の回りの動作のほとんどにつき母らによる声掛けや身守りを要する状態であることを根拠として、将来介護費が認められた事案として評価されると考えられます。

詳しくは弁護士にご相談下さい。

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弁護士法人TRUTH&TRUST

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